介護保険の現状と、PT(理学療法士)として考えた予防リハのこと

介護保険の現状と、PT(理学療法士)として考えた予防リハのこと
ゆき

2019年8月現在、僕は病院内の訪問リハビリ部門で働くPT。
僕の職場で提供できる訪問リハビリは介護保険認定者のみを対象としていることもあって、介護保険について考える機会が多くあります。

【この記事で分かること】

介護保険の現状と今後の問題点、それについて国が考えている対策とその問題点、PT(理学療法士)として僕が考えた予防リハビリのこと。

介護保険の現状と今後の問題点

この記事を書いている2019年8月時点で厚労省が公開している最新のデータによると「介護保険を使えますよ」と、介護保険の要介護・要支援の認定を受けた65歳以上の高齢者は約660万人。

(厚生労働省「介護保険事業状況報告 月報(暫定版)」で最新情報が見られます。)

この介護保険認定者は介護保険制度が導入された2000年から16年間でおよそ2.85倍増加しているという統計も出ていて、高齢化社会の中でこれからもさらに増加していくことは確実です。

そして一方で、介護保険料を負担しはじめる40歳台の人口は2021年から減少していくという予想が出ています。

なこ

利用する人は増えて、負担する人が減る…このままじゃ介護保険がうまく回らなくなる

介護保険の抱える問題をどう解決していくか?

国が考えている対策

経済産業省によると、2018年4月に行われた『第9回 次世代ヘルスケア産業協議会(こちらのページの「資料2 生涯現役社会実現に向けた環境整備に関する検討会からの報告について」参照)において、主要な疾患(生活習慣病、がん、フレイル・認知症)について一次、二次、三次予防を行なった場合、約15年後の医療費は約700億円、介護費は3.2兆円削減されると報告されています。

また同資料内で、65歳以上の高齢者が現役世代並みに働けるように環境を整えた場合、2025年の労働人口は約840万人増加すると予想されています。

65歳以上の人は介護保険において第1号被保険者(保険料を負担する人)にあたり、その保険料の決め方は「各市区町村が条例で設定する基準額+所得に応じた段階別の保険料率を乗じた額」となっています。

ゆき

65歳以上の人が現役世代並みに働く→所得が増える→納める介護保険料が増えるという流れになります

つまり、国は予防医学の推進によって健康な高齢者を増やしながら、介護保険の利用者を減らして、同時に介護保険の負担額を増やすことによって、介護保険をうまく回そうと考えているようです。

国が考えている対策の問題点

2016年時点で、全国の健康寿命の平均は男性72.14歳、女性74.79歳。

なこ

健康寿命とは2000年にWHOが提唱した定義で、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のこと。

厚生労働省の国民生活基礎調査のうち、3年ごとに行われている大規模調査の結果をもとに算出されています。

次回の大規模調査は今年2019年ですが、集計して健康寿命が発表されるまでは2、3年かかるようです。

国が65歳以上の高齢者が現役世代並みに働けるように環境を整えたとしても、現状としては健康寿命は75歳にも達していないのです。

ゆき

このままじゃ「働けって言われたって体が動かない!」という状況に…

PT(理学療法士)として僕が考えたこと

そこで僕がPTとしてできそうだと思うのは、簡単に言えば健康寿命を延ばすために予防として運動を推進して、運動療法を提供すること。

なこ

健康寿命が伸びても、「働きたい!」と思うかは別だけどね…

ゆき

そこはなかなかシビアな問題だよね…でもたぶん日本にいる限り働かざるを得ない状況になってくるだろうし…

自分の子どもたち世代が社会保障を支えるときに負担を減らせるように、って考えるとがんばらなきゃって思えるかも

なこ

それは確かにそうだね

どうせ長生きするなら、元気でいるに越したことはないね

健康日本21」の「健康日本21(第二次)の推進に関する参考資料」において、「要介護度別にみた介護が必要となった主な原因」では、脳血管疾患、心疾患、糖尿病、高齢による衰弱、関節疾患、骨折・転倒などが上がっていますが、これらは運動により予防が可能です。

また、同資料の中で、「2007年の危険因子に関連する非感染症疾患と外因による死亡数」では喫煙、高血圧に次いで、運動不足によって5万人近くが亡くなっていることも報告されています。

運動によって介護保険の抱える問題が解決できるだけでなく、死亡リスクも避けられる可能性がありますね。

予防としてのリハビリ

少子高齢化の流れの中で、介護費のみならず、医療費・年金など、社会保障費の増大に伴って「予防」が国をあげて注目されています。

医療分野における「予防」は、次の3つの段階に分けて考えられています。

一次予防

疾病にかからないように行う取り組みのこと。

・健康増進→生活習慣の改善(正しい食生活や運動の励行、禁煙など)
・特異的予防→予防接種、事故防止、職業病対策など

二次予防

疾病の発症後に重症化しないように行う取り組みのこと。
健康診査等による早期発見・早期治療

・早期発見→健康診断(スクリーニング)、人間ドックなど
・早期治療→臨床的治療

三次予防

重症化した疾病から社会復帰を促したり、再発を防止するために行う取り組みのこと。

・機能低下防止、治療、リハビリテーションなど

1965年に制定された「理学療法士及び作業療法士法」で、理学療法は「身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう」と定義されています。

つまり、予防医学の中での従来のリハビリテーションは「重症化した疾病を持つ方=法律で定められている理学療法で対象とされている身体に障害のある者」に対して行われる「三次予防」の中に位置づけられています。

でも、僕がこれから必要だと思うのは「疾病の起こる前の方=身体に障害のない方」に対して行われる「一次予防」の中の「運動の励行」にあたります。

なこ

現行の決まりではPTとして「一次予防」をやったらダメなのかな?

ゆき

と、思ってしまうけど、違うんだよー

PTが予防に関わることは、国も期待している

2013年、厚生労働省医政局から「理学療法士の名称の使用等」に関する以下の通知が都道府県に出されました。

理学療法士が、介護予防事業等において、身体に障害のない者に対して、転倒防止の指導等の診療の補助に該当しない範囲の業務を行うことがあるが、このように理学療法以外の業務を行うときであっても、「理学療法士」という名称を使用することは何ら問題ないこと。

また、このような診療の補助に該当しない範囲の業務を行うときは、医師の指示は不要であること。

つまり国も、PTが三次予防のみならず、予防全般に関わることを期待していることが分かります。

日本理学療法士協会も、これを受けて「国家的ニーズにしっかりと応えることができるように、より質の高い予防理学療法を確立し、少子・高齢社会に寄与できる理学療法士を目指すこと」「理学療法士に求められる社会的な期待と責任を十分に自覚し、これまで以上に医療職として、他の医療職種と連携して適切な理学療法を提供すること」を謳っています。

病院勤務のPTが一次予防に関わるには?

医療機関や介護事業所で患者さんや利用者さんに提供する理学療法は主に三次予防にあたります。

2019年8月現在、僕は病院内の訪問リハビリ部門で働くPT。

病院勤務という状況の中では一次予防を推進するのはなかなか難しいのが現状です…。

ゆき

そこで!このブログ発信で、読んでいるあなたやその周りの人が病気にかからないように運動を勧めたり、その方法を伝えていきたいと考えています。

おわりに

介護保険のみならず、少子高齢化の流れの中で社会保障費は「利用する人が増えて、負担する人は減る」構図になっています。

その中で、国もPTが予防に関わり、健康な人が増えることを期待しています。

僕はPTとして、このブログ発信で、読んでいるあなたやその周りの人が病気にかからないように運動を勧めたり、その方法を伝えていきたいと考えています。

ゆき

「役立った!」と思える記事があればぜひ周りの人にも勧めてほしいですし、間違っている情報や記事があればぜひ教えてください