高齢者に対する筋力トレーニングの基礎知識〜効果・負荷量・運動内容〜

高齢者に対する筋力トレーニングの基礎知識〜効果・負荷量・運動内容〜

最終更新日:2020.07.18

セラピスト
「高齢者に対して筋力トレーニングをしようと思うけど、どんなことに気をつければいいのかな?」

この記事では、
高齢者に対する筋トレの効果・負荷量(強度と頻度)・運動内容 など
について、こちらの文献を参考にしながら、私見をまじえて書いています。

リハビリのPT;理学療法士のゆきです。
この記事を書いている2020年 7 月時点で病院勤務の 8 年目。
回復期→地域包括ケア→外来を経験して、訪問リハ 4 年目です。
(くわしいプロフィールはこちら

ちょっと待って!
筋トレをしようとしているその患者さん、栄養状態は確認していますか?
食事量や血液データを確認して、リハ内容や負荷量を決めることが大切です。
(後日、記事を書くかもしれません)

高齢者に対する筋トレの効果

理学療法ガイドライン(13 身体的虚弱(高齢者)第 4 章 理学療法介入の推奨グレードとエビデンスレベル)においても、高齢者に対する筋力トレは推奨レベルAとされていて、効果が期待できます。

筋トレによる筋力増強のメカニズム

【初期】
・神経的要因(運動単位の動員や発射頻度の増加など)による筋力増強が期待できる
高齢者では主動作筋の筋活動増加、拮抗筋の共収縮抑制といった神経的因子の改善

【 4 〜 6 週目】
・神経的要因に加え、筋肥大をともなう筋力増強が期待できる
高齢者の場合は若年者と比べ筋肥大の反応は弱まる

【 8 週目】
・筋の質的要因の改善=筋内の非収縮組織(脂肪や結合組織)の減少


− 池添冬芽氏の報告(参考文献1)と市橋則明氏の報告(参考文献2)よりまとめて要約

90歳代を対象とした研究でも8週間の筋力トレーニングで大腿四頭筋の筋力や筋横断面積の増大が確認されています。(参考文献3

つまり、高齢者に対する筋トレでは、若年者とは違ったしくみであったり、また反応は弱くなる傾向はあるものの、基本的には生涯筋力増強や筋肥大の効果が期待できるということです。

注意点

筋トレによって立ち上がり能力や歩行速度は改善するという報告はありますが、筋力トレ単独での日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)の改善に関するエビデンスは不十分とされています。(参考文献2

当然ながら筋トレ“だけ”行うのではなく、目標達成に向けた複合的なトレーニングが大切です。

高齢者に対する筋トレの負荷量(強度と頻度)

高強度・低頻度トレーニングと低強度・高頻度トレーニングとの比較研究では両群ともに筋力増強・筋肥大が見られ、同様の効果が得られることが多くの報告で証明されています。

ただし、高強度トレーニングでは、筋骨格系や循環器系のリスクが高まることにより安全性が低下したり、また、コンプライアンスが低下することが懸念されます。

そのため、高齢者では特に低〜中強度・高頻度のトレーニングが安全性や継続性を考慮すると推奨されると言われています。(参考文献1

【高齢者に推奨される運動強度と頻度】

運動強度:低〜中強度
・30〜60% 1RM 程度
・Borg主観的運動強度スケール13(ややきつい)程度

運動頻度:高頻度
高強度で筋トレを実施する場合、週 2 〜 3 日の運動頻度が効果的とされているので、低強度の筋トレであれば運動頻度はより多い方が良い。
(※ただし、頻度が多くなるとコンプライアンスの低下が懸念される)


− 池添冬芽氏の報告(参考文献1)より要約

可能であれば高齢者も高強度トレーニングの方が筋力増強・筋肥大の効果が得られるものの、低強度トレーニングの方が安全かつ継続が期待できる、ということですね。
更に頻度は多い方がいいものの、多すぎると継続があまり期待できなくなる…そう、自主トレってなかなか続かない患者さんが多いですよね…!

低強度の運動って

筋トレは、例えば以下のようにさまざまな分類ができます。

①運動様式による分類(等尺性収縮・等張性収縮・等速性収縮)
②筋収縮様式による分類(求心性収縮・遠心性収縮・等尺性収縮)
③荷重による分類(荷重位・非荷重位)
④負荷形式による分類(最大筋力法・最大反復法 など)
⑤運動速度による分類(スロートレーニング・パワートレーニング)

この中で特に高齢者におすすめの筋トレが、低強度で行えるスロートレーニング(以下、スロトレ)です。

スロトレは、軽強度であっても、筋力増強、筋肥大、筋持久力向上に対する高い効果が得られるとされています(参考文献1)。

(一方で、筋収縮速度が速い運動要素(等速性筋力や筋パワーなど)の改善には不向きだともいわれています。)

なぜか?

・ゆっくりと運動を反復する=筋活動時間が長く持続する
→筋内血流が制限され酸素飽和度が下がり、乳酸が生成される事で成長ホルモンの分泌が上昇する。

・骨格筋肥大にはタイプ Ⅱ 線維の十分な活動が不可欠。
→スロトレでは初期はタイプ Ⅰ 線維のみが活動しているが、運動の持続時間が長くなるとタイプ Ⅱ 線維も同時に活動するようになり、筋肥大の効果も得られると考えられている。


− 池添冬芽氏の報告(参考文献1)より要約

一時期よくテレビでもスロトレが推奨されていたのは、こんな理由だったんですね。
高齢者への筋トレにはぴったりです。

高齢者に対する筋トレ運動内容

運動の種類、セット数、回数、頻度について、運動内容が具体的に以下のように示されている文献がありました。

【抵抗運動についてのガイドライン(高齢者)】
運動種類: 8 〜 10 種類
セット数: 1 セット
回数: 10 回〜 15 回
頻度: 2 回(最低)/ 週


− 木藤伸宏氏らの報告(参考文献4)より

ただし、セット数については 1 セットで十分な筋力増強効果が得られるかどうか疑問視されるところもあり、 2 〜 3 セットを推奨する場合もあるようです。
最低週 2 回でいいとなると、退院後に自主トレが難しい患者さんでも、デイや訪問リハなどを利用することで達成できそうですね。

まとめ

高齢者に対する筋力トレーニング

効果
・高齢者に対する筋トレでは、若年者とは違ったしくみであったり、また反応は弱くなる傾向はあるが、基本的には生涯筋力増強や筋肥大の効果が期待できる

負荷量(強度と頻度)
・高齢者では特に低〜中強度・高頻度のトレーニングが安全性や継続性を考慮すると推奨される
・スロトレは軽強度だが、筋力増強・筋肥大・筋持久力向上に対する効果があり、高齢者におすすめ

運動内容
・運動種類: 8 〜 10 種類
・セット数: 1 セット( 2 〜 3 セットを推奨する場合もある)
・回数: 10 回〜 15 回
・頻度: 2 回(最低)/ 週

ただし、大前提として、冒頭でも触れていますが筋トレを行う場合は栄養状態にじゅうぶん注意すること。
(筋トレだけでなく、リハビリ全般に言えることですが…!)
また、当然ですが筋トレだけのリハビリでは日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)の改善はできないことを忘れずにいることが大切です。

参考文献

著作権についてはこちらの記事に書かれているように解釈をして、著作権を侵害しないように注意していますが、著作権や引用についての解釈、また記事の内容に問題があると思われる場合は、お手数ですがこちらからご連絡下さい。

1)池添冬芽 : 筋トレの生理学 : 筋萎縮と筋肥大 . CLINICAL REHABILITATION 29巻 2号 : 123-130, 2020
2)市橋則明 : 運動療法学〜疾患別アプローチの理論と実際〜第2版. 文光堂 : 502-515, 2014
3)Fiatarone MA et al : High-intensity strength training in nonagenarians.Effects on skeletal muscle.JAMA263(22) : 3029-3034,1990
4)木藤伸宏ら : 筋力増強運動の基本と実際. Jpn J Rehabil Med 54巻 10号 : 746-751, 2017

 
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