簡単な転倒リスクの評価〜場所を選ばない、道具を使わない、短時間で行える〜

簡単な転倒リスクの評価〜場所を選ばない、道具を使わない、短時間で行える〜

最終更新日:2020.06.26

リハビリスタッフ
「訪問リハでの個人宅とか、小規模の通所リハとか…場所・物品・時間が限られてて、推奨されてる転倒リスクの評価を行うことが難しい場合って何をすればいいかなあ?」

この記事では、
推奨されている転倒リスクの評価スケールとその問題点
簡単な(=場所を選ばない、道具を使わない、短時間で行える)転倒リスクの評価スケール
について、こちらの文献を参考にしながら、私見をまじえて書いています。

リハビリのPT;理学療法士のゆきです。
この記事を書いている2020年 5 月時点で病院勤務の 8 年目。
回復期→地域包括ケア→外来を経験して、訪問リハ 4 年目です。
(くわしいプロフィールはこちら

こちらの記事もどうぞ
「転倒リスクの評価をするべき転倒の要因は?」
転倒の要因と、推奨されている転倒リスク評価

推奨されている評価とその問題点

理学療法診療ガイドライン第1版(2011)」の中の「身体的虚弱(高齢者)理学療法診療ガイドライン」において、転倒リスクと関連する推奨された評価は以下のようになっています。

赤文字で書かれているのは、僕が考える場所・物品・時間の制限によるこれらの評価の問題点です。

下線の引いてある評価は場所・物品・時間の制限があまりないと考えるので、可能な限り行うのがいいと思います。

【筋力(推奨グレードA)】
・膝伸展テスト:膝関節屈曲90度位による等尺性膝伸展筋力
 →厳密に筋力を測定するためには測定器が必要
立ち座りテスト:CS-30(30-seconds chair-stand test)もしくはSS-5(Sit to stand-5)

【バランス(推奨グレードA〜B)】
開眼片足立ち(片脚立位)
functional reach test(FR)
・Berg balance scale(BBS)もしくは functional balance scale(FBS)
 →項目数が多く時間がかかる、いくつかの道具の準備が煩雑
・four square step test(FSST)
 →道具の準備がやや煩雑、必要な広さがない場合がある

【移動・歩行(推奨グレード A)】
・timed up & go test(TUG)
 →必要な長さの歩行路がない場合がある
・歩行速度:10m歩行もしくは,5m歩行(予備路前後3mの計11m歩行路)
 →必要な長さの歩行路がない場合がある

簡単な転倒リスクの評価

僕が使っている簡単な、つまり「場所を選ばない、道具を使わない、短時間で行える」転倒リスクの評価は以下のとおりです。

評価項目としては転倒の内的要因を全般的に把握するためのスクリーニング検査、そしてPTとしては最低限「転倒歴、筋力低下、バランス障害、歩行障害」の評価を含みたいと思って選びました。

あわせて読みたい
「転倒の内的要因ってなに?どうして転倒歴・筋力低下・バランス障害・歩行障害について評価するの?」
転倒の要因と、推奨されている転倒リスク評価

スクリーニング:転倒・転落アセスメントスコア

まず、内的要因を包括的に把握するための初回のスクリーニングとしては、転倒・転落アセスメントスコアを利用しています。

転倒歴についてはここで聞いていきます。

− 前田真治氏の報告(参考文献1)より

転倒転落アセスメントスコアについての背景は以下のようになっています。

各種の転倒・転落に関連するアセスメントの方法(以下,アセスメントツール)が国内外で作成されてきた

わが国では,横浜市立市民病院が作成,日本看護協会が紹介したことで全国に広まった転倒・転落リスクアセスメントスコアシートが普及している

尺度の項目の表現の曖昧さや感度の問題から多種多様なアセスメントツールへと改訂されている

− 征矢野氏らの報告(参考文献2)より

もっと細かく項目数がある改訂版もたくさんあるのですが、時間がかかるので…僕は、改訂された中でもシンプルで、点数に合わせて危険度に応じた対応の例まであるため、上記のものを利用しています。

筋力:立ち座りテスト

これはCS-30、もしくはSS-5を利用しています。

CS-30のほうが性別・年齢階級別の評価表があるので、こちらの方を使うことが多いです。

ただし、この評価にはどうしても適当な高さのいすが必要です。

訪問リハだと、いすがない場合もあります。
それぞれの家の事情があるので仕方ないのですが、そのときはあきらめて他の項目の評価を行います。

バランス能力:SIDE

バランス能力評価として、FRもいいのですが、僕はSIDE;Standing test for Imbalance and Disequilibirium を利用することが多いです。

理学療法診療ガイドラインの中で推奨されている開眼片足立ち(片脚立位)の評価を含みながら、評価結果とあわせて歩行補助具の選定まで示されていて使いやすいと思ったからです。

− 寺西利生氏の報告(参考文献3)より

Level2以上のバランス能力があれば、歩いてもらいましょう。

訪問リハや家屋調査など自宅環境を確認できるなら、トイレまでなどよく歩く導線で歩行状態、また転倒しやすい環境がないかなどを確認すると良いと思います。

歩行能力:(検討中)

訪問リハだと必要な長さの歩行路がない場合も多いのですが、歩行障害の評価にはやはりある程度長い歩行路が必要で、代わりになるような評価が見当たりません

可能であればTUG、それから10 m歩行もしくは5m歩行を利用します。

なにか他に良い評価を知ってる方がいればぜひ教えて欲しいです!

二重課題:SWWT

上記に加え、僕はSWWT;Stops walking when talking’ test(二重課題の評価)も利用しています。

− 井上氏らの報告(参考文献4)より

Lundin-Olssonらの研究(参考文献5)によると、施設高齢者を対象とした研究で質問時に立ち止まった人は質問に答えながら歩けた人に比べ6ヶ月後の転倒率が約80%であったと報告されています。

研究結果としては特異度は高かったものの感度は低かったという考察もあるのでうのみにはできませんが、簡単でありながらそれなりの陽性率を備えているので利用しています。

おわりに

簡単な、つまり「場所を選ばない、道具を使わない、短時間で行える」転倒リスクの評価は以下のとおりです。

評価項目としては転倒の内的要因を全般的に把握するためのスクリーニング検査、そしてPTとしては最低限「転倒歴、筋力低下、バランス障害、歩行障害」の評価を含みたいと思って選びました。

同じ悩みを持つセラピストの方の参考になれば幸いです!

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「転倒リスクの評価をするべき転倒の要因は?」
転倒の要因と、推奨されている転倒リスク評価

参考文献

著作権についてはこちらの記事に書かれているように解釈をして、著作権を侵害しないように注意していますが、著作権や引用についての解釈、また記事の内容に問題があると思われる場合は、お手数ですがこちらからご連絡下さい。

上の文献をまず参考にして、下の文献を孫引きしたり、新たに調べたりしてこの記事を書きました。

1)前田真治:リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン. Jpn J Rehabil Med 2007 ; 44 : 384.390.
2)征矢野あや子ほか:日本転倒予防学会会員を対象とする転倒・転落リスクを把握する方法に関する質問紙調査の報告. 日本転倒予防学会誌, Vol.5 No.1:41-49, 2018.
3)寺西利生:病棟における転倒予防:バランス評価尺度 Standing test for Imbalance and Disequilibirium(SIDE). 日本転倒予防学会誌, 4巻1号:5-10,2017.
4)井上和章ら:脳卒中片麻痺者の自立歩行能力判定. 理学療法科学 25巻3号:323–328 ,2010.
5)Lundin-Olsson L,et al”Stops walking when talking” as a predictor of falls in elderly people.Lancet 349:617,1997.

 
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