エビデンス(根拠)に基づく理学療法とは?〜EBMからEBPTまで〜

エビデンス(根拠)に基づく理学療法とは?〜EBMからEBPTまで〜
ゆき

どんなリハビリが患者さんに適しているのか?
いまなんとなく行なっているリハビリは正しいのか?

PTとしてリハビリに自信がもてないとき、どうやって効率的にエビデンスの高い情報を得て、エビデンスに基づく理学療法を提供したらいいのでしょうか…EBPTは直訳すると「根拠に基づく理学療法」のこと。
これを知ればこの疑問も解決しそうな響きです(が…)。

【この記事で分かること】

EBPT(Evidence-based Physical Therapy=根拠に基づく理学療法)のこと、またそれに付随してEBM(Evidence-based Medicine=根拠に基づく医療)について。

エビデンスに基づく理学療法を行う方法について知りたい方向けにまとめ始めたのです…が、結論から言うと、現時点の僕のできる範囲でEBPTのことだけを調べても、どうやって効率的にエビデンスの高い情報を得て、エビデンスに基づく理学療法を提供したらいいのかということは分かりませんでした。

そのため、手っ取り早くEBPTの概要だけ知れればいいよ!という方は「まとめ」だけ読めば十分だと思います。

EBPTの前に…EBMとは

ゆき

理学療法分野におけるEBPTは、医療分野においてのEBMをもとに導入されているので、その概要をすこし知っておくとEBPTの理解につながると思います。

Evidence-based Medicine(根拠に基づく医療)」の略で、最善の医療をおこなうための行動指針・様式。

EBMのはじまり

EBMの土壌ができたのは、アメリカとされています。

文献にはっきりと「EBM」の言葉が最初に見られるのは1992年。

日本の医療界にこの考え方が導入されたのは1990年代後半頃とされています。

EBMが世界的規模で注目されるようになった要因として、大きくは次の2つが挙げられることが多いようです。

(1)インターネットの普及(医療者のみならず多くの人が医療情報を入手しやすくなり、医療の内容・質に対する意識が社会全体として高まってきた)
(2)疫学・統計学の進歩(医療情報の信頼性を判断するための基準が整備されてきた)

EBMの考え方の基礎

いろいろな解釈があって、また誤解も生まれやすいようですが、

医療行為は、患者にもっとも良い結果をもたらすものが選択されるべきである
医療行為の選択においては、“その時点で利用可能なもっとも「エビデンス(根拠)」の高い情報”と共に、「患者の臨床状況と環境」「患者の意向と行動」「医療者の臨床経験」も同じく考慮することが重要である

とざっくり理解しておけば、EBM(あるいはEBPT)を用いた患者さんへの治療(あるいはリハビリ)の選択を誤らずにすむのかなと思いました。

そして注意するべきなのは、「“その時点で利用可能なもっとも「エビデンス」の高い情報”だけが患者にもっとも良い結果をもたらすわけではない」ということです。

EBMの5つのStep

EBMの手順としては、5つのStepが提唱されています。

Step1. 患者についての問題の定式化
Step2. 定式化した問題に関する質の高い情報の検索
Step3. 検索した情報の批判的吟味
Step4. 批判的吟味した情報の患者への適用
Step5. 1.から4.までのステップの評価

この中で、Step4の「Step2で収集して、Step3で吟味した情報を、目の前の患者さんにどのように利用していくか」という手順こそ、EBMの実践においてもっとも重要な段階とされています。

Step4の手順を行うときには、「エビデンス」だけでなく「患者の臨床状況と環境」「患者の意向と行動」「医療者の臨床経験」の4つを考慮すべきだと言われています。

EBPTとは

Evidence-based Physical Therapy(根拠に基づく理学療法)」の略。

EBMの概念をもとに理学療法分野に導入されたもので、最善の理学療法をおこなうための行動指針・様式

EBPTのはじまり

EBPTの初出については、はっきりとは分かりませんでした。

ですが、日本理学療法士協会によってEBPTについて教示する「EBPTチュートリアル」というページが作られていたり、EBPTについての論文などもあり、日本にEBPTという概念が存在するのは確かです。

また、インターネット上で調べられたEBPTの記述がある文献のうちもっとも古かったものが2002年のもの、そして2003年の第38回日本理学療法学術大会のテーマがまさに「科学的根拠に基づく理学療法(Evidence-based Physical Therapy:EBPT)」となっているので、日本の理学療法界にこの概念が根づいたのはこの2000年代の前半頃ではないでしょうか。

EBPTの考え方の基礎

日本理学療法士協会が提供する「EBMからEBPTへ」のページにおいては、2009年5月1日付けで次のように記載されています。

EBMの概念に基づいてEBPTの概念的定義を考えると、「EBPTとは、個々の患者に関する臨床問題や疑問点に対して、(1)臨床研究による実証報告としての科学的根拠、(2)理学療法士の臨床能力、(3)施設の設備や機器の状況、(4)患者の意向や価値観を統合した最適な臨床判断を行うことによって、質の高い理学療法を実践するための一連の行動様式」と位置づけることができます。

ゆき

「EBMの考え方の基礎」をもとにしているのが分かりますね。

EBPTの5つのStep

日本理学療法士協会が提供する「EBPTの実践」のページにおいて、まずEBPTの取り組みには、「エビデンスをつくる」、「エビデンスをつたえる」、「エビデンスをつかう」という要素があるといわれています。

そして、臨床現場でEBPTを実践するためには、これらのうち「エビデンスをつかう」という取り組みが基本となり、その手順としても、EBMと同じく5つのStepが提唱されています。

Step1. 患者の臨床問題や疑問点の抽出と定式化
Step2. 患者の臨床問題や疑問点に関する情報の検索
Step3. 得られた情報の批判的吟味
Step4. 得られた情報の患者への適用の検討
Step5. 適用結果の評価

そして、EBMと同じくStep4が「この段階こそがEBPTの真骨頂」と重要視され、またEBMと同じく「“その時点で利用可能なもっとも「エビデンス」の高い情報”だけが患者にもっとも良い結果をもたらすわけではない」というようなことがうたわれていました。

EBPTの問題点

僕はEBPTの5つのStepそれぞれについての説明をいくつかの文献を使って読んでみたのですが、ひかえめに言って、Stepごとの説明はまだ多くのPTが理解できるほどには整理されきっていないと感じました。

特に痛手だったのは、Step2において質の高い臨床研究を検索する方法がしっかりと確立されているとは言えないと思ったときでした。

その中でも一番具体的にインターネットにおいての検索方法が書かれていたのは2007年に木村貞治氏が発表した「EBPTの実践に向けて」という論文だと感じましたが、主に統計学や英語についての前知識が必要だったりと結構難易度が高いため、そういった知識をそれほど持たないいまの僕にとっては効率的だとは言えないと思いました。

(統計学、また英語に精通しているPTさんなら上記の論文に書かれている方法でチャレンジしてみる価値があるのだと思います。

そのときは日本理学療法士協会が提供する「EBPTワークシート」のページで、EBPTを臨床に活用した実践例を参考にするといいと思います。)

ゆき

エビデンスの高い情報だけがすべてではないとはいえ、エビデンスを無視していいわけではないし…。
結局、どうやってエビデンスの高い情報を得て、エビデンスに基づく理学療法を提供したらいいの?

まとめ

結局、ここまでで分かったのは、医療界における「EBM(根拠に基づく医療)=最善の医療をおこなうための行動指針・様式」を理学療法界に「EBPT(根拠に基づく理学療法)=最善の理学療法をおこなうための行動指針・様式」として導入しようとはしているものの、まだ確立されているとは言い難い、ということでした。

つまり、現時点の僕のできる範囲でEBPTのことだけを調べても、どうやってエビデンスの高い情報を得て、エビデンスに基づく理学療法を提供したらいいのかということは分かりませんでした。

(一部具体的な情報検索の方法も見つかりましたが、統計学や英語についてそれなりに精通していないとかなり難しいと感じました。)

そもそも日本理学療法士協会が提供する「EBMからEBPTへ」のページにおいては、以下のように記されています。

わが国の理学療法領域では、科学的効果判定の追究をはじめ、理学療法の科学性の確立に積極的に取り組んできていますが、現在のEBMの限界や理学療法特有の問題などから、EBMをそのままEBPTとして導入し実践するには課題も多く、研究の蓄積が臨床に十分生かされていない面があります。

ただ、EBPTについて学んでひとつだけ大事だと思ったのは、「“その時点で利用可能なもっとも「エビデンス」の高い情報”だけが患者にもっとも良い結果をもたらすわけではない」ということでした。

これを頭に置いて、もっとも「エビデンス」の高い情報かは不明でも、より「エビデンス」の高い情報をどうやって得て、エビデンスに基づく理学療法を提供したらいいのかをまとめて、後日また書いていきたいと思います。